kochorinの独り言

サラリーマンをリタイアすることに決めました。退職までの経過と、働くということに関して自分が考えたことなどをつぶやきます。

女性の就業を阻むもの

前回のエントリーに関連して、女性の就業を阻む要因について考察していきます。


まず女性が働くための物理的環境(更衣室、トイレ、休憩室など)や上司・同僚の意識ですが、これらは一昔前に比べ格段に向上していると思います。総務省の労働力調査によると、女性の就業率は15才~65才では1986年の53.1%から2016年の66%へと12.9ポイント上昇、25才~44才でも57.1%から72.7%へと15.6ポイント上昇しています。

つまり一昔前に比べて働く女性の絶対数の増加に伴い、女性のたちの意見が通りやすくなり、物理的な就業環境や上司・同僚たちの意識面が向上しているということがうかがえます。


これに対して、社会システム、制度的な面ではまだまだ課題が残されています。


まず一つ目の問題として、妊娠・出産中のキャリア中断という課題が挙げられます。

女性には妊娠・出産というライフイベントがありますので、どうしても一定期間労働市場から離れる必要が出てきます。
大手企業には出産、育児に伴う休職制度が整備されていますが、だから安心という訳ではありません。出産・育児休職中は企業としても代替要員を確保しておく必要がありますから、当然そのポストには新しい人をあてます。したがって、出産・育児を終わって出社する際には以前と別のポストに就かなければならないという事態が発生します。これは当該女性のキャリア面でマイナスとなる場合もあるでしょう。


更にもっと深刻な問題は、自身または配偶者の転勤に伴う家庭生活との両立問題です。

日本の大企業では、特に大学卒の総合職に対してジョブローテーションとして、頻繁に転勤を命じる労働慣行があります。国内、海外に多くの拠点を有する大企業が該当しますが、これは当人の育成という意味だけでなく、人材の適正配置という意味があります。

すなわち、それぞれの拠点にその時の経営環境、経営戦略にあった適正人材を割り当てる必要性から、こうした転居を伴う人事異動が頻繁に発生するわけです。企業側から見ると転勤は人材の有効活用という意味で必要性があって実施しているものなのですが、従業員個人、特に家庭生活との両立をめざす女性にとっては死活問題となります。

夫と2才の子供を抱えて東京で共働きをしている女性の例を見てみます。もしこの女性に九州への転勤の辞令が出た場合、どうなるでしょうか。

選択肢は次の4つになります。
①女性が単身赴任で九州に行き、夫は子育てしながら東京で働く。
②女性が子供を連れて九州に行き、女性が子育てしながら働き、夫は単身で東京で働く。
③女性が会社を辞めて、夫と家族一緒に東京で暮らす。
④夫が会社を辞めて、女性と家族一緒に九州で暮らす。


男性優位な日本社会の現状から、夫一人で子育てするという①や、夫が会社を辞めるという④は圧倒的少数派です。その場合に女性が就業を継続するためには②の選択肢しかないことになりますが、女性が縁もゆかりもない土地で一人で子育てするハードルは相当高いと思われますし、また一人で生活する夫の理解も得なければなりません。したがって、現実的には③の選択肢をとる女性が圧倒的多数になります。

また、こうした事情が分かっているから企業側としても既婚女性に転勤辞令を出すことがためらわれますし、現実的には転勤辞令が出されるのは圧倒的に男性社員か独身の女性社員が多くなります。

更に言うと、こうした転勤への制約条件の多い女性の総合職採用はできるだけ避けたい、というのが表立っては言えない企業側のホンネの意見だと思います。

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