生産性②
日本の生産性は先進国の中で圧倒的に低いと言いましたが、それはなぜなのでしょうか?
生産性と一言で言っても、すべての職種において生産性が低いわけではありません。
日本生産性本部によると製造業の生産性上昇率はG7でトップであるのに対し、ホワイトカラーの生産性上昇率はマイナスになっており、G7で最下位とのこと。
つまり日本の製造業(モノづくり)の現場の生産性は海外に比べて低いわけではなく、問題は間接業務に従事している人、いわゆるホワイトカラーの生産性が圧倒的に低いのです。
それではなぜ日本のホワイトカラーの生産性はここまで低いのでしょうか?
私が思うに、一番の問題は日本の経営者がホワイトカラーの生産性という概念を全く意識していない、あるいはこれまでそのようなことを意識する必要すらなかったから、だと思います。
日本の労働環境、慣行では、これまで終身雇用を保証するかわりに従業員に滅私奉公を強いてきました。例えば、ついこないだまでホワイトカラーのサービス残業は当たり前のこととして黙認(むしろ積極的に推奨?)されていましたし、過労死という不名誉な日本語がkaroshiとして英語辞書に記載されたのも2002年のことで、かれこれもう15年も経つのに未だ電通の一件に見られる通り、過労死による死者数は高止まりしています。
このように従業員が長時間労働も厭わず、文字通り命を削って文句も言わず従順に働いて、かつ残業代も支払う必要のない環境で、経営者に生産性を上げようというインセンティブが働くでしょうか?
生産性の分母である労働時間が追加コストなく無尽蔵に手に入る環境下では、生産性の概念など頭から消えてしまっていても不思議ではありません。
ところがここ最近、急激に風向きが変わり、政府も本気で生産性向上に舵を切りつつあります。その理由は先述した通り日本の経済大国としての地位を維持するためですが、そのためには生産性の向上(働き方改革)が不可欠です。これまで企業の労働基準法違反を黙認していた労働基準監督署が「かとく(過重労働撲滅特別対策班)」まで設けて、違反企業の摘発、是正に本腰を入れ始めたのもこの流れの一環です。
かくして、これからは生産性に目をつぶった経営は許されず、またそのような企業はいずれ淘汰されていく運命にあるでしょう。