kochorinの独り言

サラリーマンをリタイアすることに決めました。退職までの経過と、働くということに関して自分が考えたことなどをつぶやきます。

権限委譲

典型的な日本企業の多くは、適切な権限移譲ができていないという大きな問題があります。



例えば、ある地方の工場において大口顧客からの受注が入り、増産の必要が生じたとします。

そこで工場長は増員と設備増強が必要と判断し、人の採用と設備増設に動こうとしますが、ここで本社の人事部門からストップがかかります。

「今は採用を認めていない。必要があれば他の工場から応援をもうらうか、もしくは勤務変更などで乗り切りなさい」と言われます。

本社の設備部門からも待ったがかかります。「その投資は投資基準に合致していないので認めるわけにはいかない」と言われます。

そこで工場長は人事部門に対し増員の必要性を何とか理解してもらおうと、複数回にわたって人事部門との打ち合わせ持ち、膨大な資料を作って一生懸命説得しようとします。

採用が無理であれば、今度は他の工場にかけあって何とか応援をもらおうと説得を続けます。

仮にそれで人員問題が解決したとしても、次は設備の問題です。今度は本社の設備部門と同じようなやり取りが繰り返されます。

この間、多大な労力が費やされ、時間が無駄に過ぎていきます。

そうこうしているうちに、お客様は他のライバルメーカーに転注を決めてしまいました。



適切な権限移譲が出来ていない組織では、次の3つの問題が発生しています。

1.課題に対してリアルティのある最適解を提案、実行できない

本社部門は現場のリアルな現実を知りません。現場の実情を一番よく分かっているのは、現場の最前線にいる工場長です。だからこそ工場長の判断を重視すべきだし、その判断が妥当であるケースがほとんどです。もしその判断が信用できないというのなら、そもそもそのような人を工場長に任用すべきではありません。


2.課題に対してスピーディーな対応ができず、著しく生産性が下がる

いちいち本社部門にお伺いを立てなければ施策が実行できないとしたら、まず迅速な対応など不可能です。このため競合他社に先を越され、すべてが後追いの対応になります。また、本社部門を説得するために膨大な資料を作成し、何度も打合せを実施しなければならず、そのためにかかる労力、工数たるや甚大なものがあります。

3.人が育たない

人は自分で決断し、その責任を自分で負うことによって成長していきます。いちいち本社から口出しされる環境では、指示通りにしか動かない指示待ち人間が出来上がります。仮に本社の指示にどおりやって失敗しても、自分の責任ではないですから工場長の責任は問われません。この方が工場長にとっては圧倒的に楽ですから、次第に自分で考えなくなります。こうして社長以外の誰もが自分で責任を取らない、社員総無責任体制が出来上がります。

ちなみにこれは本社部門と工場長の間だけの話ではなく、どのような階層における上司と部下の関係にもあてはまります。


ほとんどの日本企業は、外国企業と比べて権限移譲が上手くできていませんが、その原因は社員一人ひとりの責任と権限が明確になっていないという点に尽きます。社員それぞれにどんな権限があり、どんな責任を負っているのかについて、社内でしっかりと共有できているという組織は皆無といってよいでしょう。

この点は日本人の仕事に対するやりがい、働き甲斐が、諸外国に比べてダントツに低くなっている大きな要因にもなっています。

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