kochorinの独り言

サラリーマンをリタイアすることに決めました。退職までの経過と、働くということに関して自分が考えたことなどをつぶやきます。

密告制度

公益通報者保護法という法律があります。

これは、ある事業者が重大な法令違反行為を行った際に、その組織に属する人が不法行為を是正する目的で、自分の属する組織について内部告発を行った時、その告発者に対し不利益が及ばないように保護するための法律です。

つまり平たくいうと、公の利益のためにした告発は保護してあげるので、不正があればお上にじゃんじゃん通報しなさいという制度です。


これに関連して多くの企業では、内部通報制度というものを制定しています。
これも平たくいうと、自分の組織に不正があった際にただちにお上やマスコミに通報されてはたまらないので、外部への告発の前に自分の組織に通報しなさい、そうすれば通報者のことは保護してあげますよ、という制度です。


わたしがここで言いたいのは、公益通報者保護法や内部通報制度が良いとか悪いとかという話ではありません。それらの制度は不正を未然に防ぐ上で一定の抑止力になっているでしょうし、万一不正があった場合にも、被害が拡大する前の早い段階で食い止める一定の役割があることは承知しています。

わたしが言いたいのは、この手の制度を運用する際には十分気をつけておかないと、思わぬしっぺ返しを食う危険がありますよ、ということです。


具体的に事例をあげます。
ある会社の監査委員会での会話です。

報告者「今年度の内部通報はx件でした。これは前年度対比でマイナス10%の結果です。」

監査役「せっかく内部通報制度を設けているのに通報件数が少なすぎるのではないか?来年度は必ずy件以上出させるように周知徹底してくれ」

報告者「承知いたしました。来年度は必ずy件以上出させるように周知徹底します。」


内部通報の件数が増減する原因を場合分けすると、以下の4つのうちいずれかに該当します。
①制度は周知されているが、不正事例は現場レベルで解決されているため告発件数は減少している。
②制度は周知されていないが、不正事例は現場レベルで解決されているため告発件数は減少している。
③ 不正事例が現場レベルで解決されていないが、制度は周知されているため告発件数は増加している。
④ 不正事例は現場レベルで解決されていないにも関わらず、制度が周知されていないため告発件数は減少している。

言うまでもなく内部通報云々以前に、不正常事例が発生したら現場レベルで正しい倫理観の元に適正に対処するのが正常な組織のあり方であり、現場レベルで正しい対処ができなかった場合にはじめて内部通報制度の出番となります。そういう意味ではあるべき理想の組織の順番をつけると①>②>③>④の順番です。


今回の事例のように通報件数が減少するケースは①と②、④が該当しますが、問題となるのは④のみであり、①と②は通報以前に現場レベルが正しい判断のもとに不正常事例に向き合い解決しているため、全く問題ではありません。

ところが、この①や②のケースであるにも関わらず、通報件数をあげるようにプレッシャーをかけたらどうなるか?

本来通報すべきでないような些細な問題を殊更大げさに通報したり、上長に相談すれば簡単に解決する問題を指揮命令系統を飛び越えて通報したりするようになり、組織風土を悪化させる一因になります。


こうした密告を主体とした組織がイノベーティブな組織風土と相容れないことは、ソ連、中国、北朝鮮などの事例を見るまでもなく明らかです。

本来めざすべきことは、通報件数を増やすことなどではなく、通報制度がなくても現場レベルが正しい倫理観のもとに正しい判断、対処ができる組織をつくることであり、そのためにはなんでも仲間や上司と相談できる風通しの良い組織風土をつくることが大切なのです。

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